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あさじむおう

Author:あさじむおう
文章荒れまくってるブログですが
いつもボロボロになった1日の終わりに
書いてるので許してください。

さまざまな活動報告や、映画、音楽の感想を中心に。

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もうひとつの応募作
 昨日の奴に時間をかけていたので、とりあえず応募はしとくかとアップしちゃった奴なんだけど、ちゃんと一話分書いてアップしなおしたい……。笑
 審査の対象にならないだけで、応募しなければ別にいいっぽいので当初の予定通りに一話分書いた奴をアップしようかなぁ。
 って事で、とりあえず今の所の分を以下に。
 みんな大好き「シュレティンガーの猫」をネタにしてます。
 ※ただし……


//////////////////////////////////////////////////////////////////////


 おかしな人間など、この世には一人もいない。

 もしも君が、誰かから「おかしいよね」と言われているのなら、こう言い返してやればいい。
「おかしいのは、あんたも一緒だろ」
 そう。人はみな、どこかしらおかしい。 
 というよりも、だよ? 
 そもそも「おかしくない」って、どういうことだろう。
 たとえば、今ここに、一杯の炭酸林檎ジュースがある。ワンカップオブアップルサイダー。これは、今いるこのハンバーグレストランで毎日頼んでいるもので、当たり前だが、毎日同じ味がする。同じでなかったら、『おかしい』。
 でも、その『おかしい』って、本当におかしいの?
 大体、本当にいつも同じ味なのかね?
 氷の量、糖分の濃度、どれだけ厳密にマニュアルに従って注いだって、一ミクロンも違わないなんてことは不可能だ!
 それに、味って言うのは飲む人一人一人によっても変わるものだ。
 それどころか、同じ人でも、毎日毎時毎分違う!
 ほら、体の具合が悪い時は、なに食べても美味しくないってあるでしょう。
 つまり、本当は『おかしい』なんて存在しないのだ。
 いや、みんながみんな『おかしい』。
 『同じ』というのは概念でしかない。
 『同じ』、も、『おかしい』、も、ただの概念だ。
 ミクロの世界の量子と同じで、仮想の定義でしかないのである。
 人間は、それぞれが別の個体としてしか生存できない。だから、一人一人が違う傾向を持たざるを得ない。
 誰も『同じ』なんかじゃない。
 人は誰もがおかしくて、それで正常なのだ。
 
///////////////////////////////////

 おかしな人間など、一人もいない。
 『おかしくない』という状態は、存在しえない。
 強いて言えば、誰もがみなおかしいのだ。
 人は誰もが概念的な『おかしさ』を持つ。
 それこそが絶対真理。 
 その鼻先をつま先で蹴飛ばすと、そいつはイヌみたいにヒンヒンと泣いた。
 もちろん、知っている。
 イヌとヒトとは違う。だが、より正しく、この世界の絶対的真理であるはずの理系的に考え方をするのであれば、全ての生物が同祖なのであるから、蹴飛ばす対象としてのイヌとヒトとを明確に区別するのは、倫理的に良くない。
 とにかく、そいつはイヌみたいに泣いた。
 ただの比喩ではない。これまでの度重なる実験で、蹴飛ばしたり、殴ったり、バットで背骨をへし折ったり、足を切ってやったりしたイヌは、こういう顔と泣き方をするのだと分かっている。
 その涙と声とは、たとえば、こんな具合のコトダマを放射してくる。
 ぼくは悪くありません。
 ぼくは被害者です。
 ぼくは、こんなことをされる筋合いにはありません。
 それなのに、こんなヒドい事をされるのは、あなたがヒドい人間だからです。鬼畜だからです。
 イヌでもヒトでも変わらないらしい。
 きわめて抜本的な理解にして、合理的に明快。
 アスファルトに血が流れている。あまりやりすぎると死ぬので、別の場所を蹴ることにした。
「ぎょぴッ!」
 そいつはヒトというよりは観賞用の魚みたいな声を上げたが(魚の悲鳴は聞いた事がないので、これは詩的な比喩だ)、肋骨は、そんなに簡単には折れない。この程度で折れるのであれば、カルシウムが足りないのだ。構造的な素材の欠陥なのである。欠陥をかかえたままで生きていくのは良くない。だから、カルシウムが足りているかどうかを教えてやるためにも耐久テストをしてやるのが義務だと感じて、また蹴った。
「ぎょぴッ」
 そいつは、また同じ声をあげる。つまり、再現性のある現象だ。これは声というよりは、音、肺と気管支との織りなすラグジュアリーなハーモニーのようなものかもしれない。ハーモニー、ハーモニー、ラグジュアリーなハーモニー。マンションの広告めいた悪しきコトダマに悪寒を覚えた。文系的な正しさによれば、そんな風に言葉が汚染されたから、日本と日本人はダメになった。いけない。脳のワーキングメモリーから悪しきコトダマを消去した。
 それはともかく、どういう仕組みでその音が出るのか分からなかったので、とりあえずマネをしてみる。
「ぎょぴーっ」
 マネをしながら蹴った。
 男なら股間の急所を蹴ると面白いのだが、あいにく、そいつは女だった。名前を斎藤愛という。可愛さはクラスの中では中の上ぐらいで、髪の毛は偽りの漆黒。我々特有の元々の黒を穢すその偽りに反社会性を観測し、こうして倫理的な罰を与えている。倫理とは社会を維持するために必要なルールであり、守られなければいけない規範だ。だからシツケとして厳しく体に覚え込ませなければならない。ゆえに守らない人間は蹴っ飛ばさなくてはならない。
「ぎょぴッ!」
 斎藤愛がまた音を立てた。
「ぎょぴーーっ」
 マネをして、また蹴り飛ばす。
「ぎょぴッ!」
 少し音程があがった。それが音波周波数の最高値で、そのまま蹴り続けていると、どんどんと下がって行き、やがてなんにも喋らなくなった。
 はぁはぁ、はぁはぁ、と、斎藤愛は肩で息をしている。頬も紅潮しているが発情しているのでないことは自明である。なぜなら、もし発情しているのであれば、このうつ伏せの状態から尻をつきあげてくるはずだからだ。その兆候は観られない。顔を横向けて、虚ろな眼をしている。いわゆるレイプ目というものだ。レイプはしてないのだが。
 本当に死んでしまったら洒落にならないので、このあたりでやめておくことにした。動きを止められれば、それでいい。
 用意しておいた箱を組み立てる。楽しいということもなく、哀しいということもない。そうあるべきだと自分をシツケてきた。なににも動かされずに、究極に理性的に。人間とは、そうあるべきで、そうでなくてはならない。
 人間一人が収まらなければならないので、箱は結構な大きさだ。スーパーマーケットでもらって来た段ボールをガムテープで張り合わせて作ってある。
 二次元的な二頭身デフォルメキャラになって、箱の組み立てにわたわたしている自分を想起した。可愛い。可愛いは正義だ。涙のコトダマが放射してきたように、もしかしたら自分は斎藤愛にヒドいことをしているのではないかと疑う気持ちもあったが、可愛いは正義という良いコトダマによって文系的に緩和された。
 可愛いは正義なのだから、自分は正しいことをしている。
 斎藤愛に箱をかぶせる。斎藤愛の姿が箱に隠れて見えなくなる。
「よし。これで誰にも観測されないぞ、っと」
 清々しい気持ちになった。
 この場所には誰も通らないから、観測者はいないが念のためである。
 誰かに観測されるまでは、状態は確率的だ。逆に言えば、観測されてしまうと確定してしまう。 
 これが有名な「シュレディンガーの猫」。
 今、箱の中で誰にも観測されていない斎藤愛は、量子力学的に言えば、生きているのと死んでいるのとが重なり合った状態にある。よって誰かが箱をあけさえしなければ、死は確定しない。量子力学はトンデモではないのだから真理で、ゆえに、この行為は理系的な絶対の真理だ。
 文系的に言い換えよう。
 つまり、この箱をあけたものが斎藤愛を殺すのだ。 

///////////////////////////////////

 斎藤愛の机には、安物のフォトフレームに入れられた彼女自身の写真が飾られていた。黒のマジックで四隅に斜めの直線を入れたそれは、あきらかな遺影だった。
 誰がこんなものを置いたのか分からない。少なくとも、私が教室に来た時には置いてあった。
 私の名前は真島サチ。サチとはハッピーの意味で漢字で書くと「幸」なのだが、ババ臭いという理由からカタカナ表記になったと母からは聞いている。この名前から分かるとは思うが一応ことわっておくと、女だ。
 私は現在、神奈川県内のとある高校の二年生だが、学校の名前をここには記さない。書く必要はないだろう。書かなくてもじきに分かるだろうから。いや、斎藤愛の名前を出した時点で、ググれば判明してしまう。
「あれって、ちょっとひどいよね」
 私の右隣で顔をしかめたのは早川亜紀。私の友達だ。私よりも五センチだけ背の低い亜紀は、本当にかわいい女の子だ。死んだら嘆き悲しむ人は多いだろう。男にも女にも。
「うん……」
 生返事になって言葉尻がにごった。笑ってしまいそうになった唇を強く結んだせいで、細かく震えるおかしな口元になった。
 斎藤愛は三日前に死んだ。
 彼女は亜紀とは違う。死んで当然の女だ。すくなくともクラスの女子からは、そう思われていた。本当に死んで当然の女だったと。
 これは、復讐の物語だ。
 これから始まり、私が始める。
 手を汚す覚悟も、倫理を超える発想の転換も、私には要らない。怒りと嫌悪と、そして、「ちゃんと事を成し遂げられたら、自分に自信が持ててきっと爽快だろうな」という感じの前向きな期待が、私の原動力となる。
 私と亜紀は、それぞれ自分の席につく。斎藤愛と親しくなかったとは言っても、亜紀は素直な子だから、それなりには心を痛めているだろう。斎藤愛の遺影もどきは、昨日は置いていなかった。誰かのわるふざけに決まっている。誰のしわざにせよ、気味が悪い。
 クラスは平静を装っている。朝のホームルームがはじまるまでの、いつものおしゃべりで時間をつぶしているフリ、机にうつぶせていつもどおりに眠っているフリ、いつも通りの自分を演じている誰もが、どこか表情がかたい。私は心の中で、こう思う。どうした? もっと喜んでよ。嫌われ者が死んだんだよ。死んでまだ、はずかしめを受けているんだよ。楽しいよね? 嬉しいよね? 
 私の頭の上に、誰かが手を置いた。
「あぅ」
 驚きの声を出してしまうと、その手の持ち主に笑われた。 
「かわいい声あげんな」
 声の方へと顔を向けると、加藤ミハルがいた。ぽんぽんと、軽く私の頭を叩く。その衝撃に私は、自分の目が不等号めいた記号的形象になるのをイメージする。相手がミハルなので、速急にモードを切り替えなければならない。二次元記号キャラクターコンバーチブル……略して二次コンモードだ。ミハルはオタクなのだ。オタクは記号でしか現実世界を認識できない。そういう人間だから、現実の友達が極端に少ないか、まったくいない。だから、こちらが相手を思いやって、オタク世界的なキャラクターになりきってあげなければならない。結婚相談所経由で結婚して私を産んだ母が「婚活で大事なのは、男を立てる女になること」と、よく言っているが、これはその応用だ。オタクとつきあうのに大事なのは、なんと言っても、オタクを立てること。そして、オタクを立てた時、それが嘘くさくならないように、オタク世界に自分が同化することだ。つまりは「同じ」ななること。
「も〜、びっくりしたよ〜ぅ」
 私の口から、アニメの声優もビックリの情感豊かな声が出た。今日はいい具合だ。もっとも声優になるわけではないので、出来にこだわる必要も、出来を求めて訓練の必要も、まったくない。
 私達がこうた演劇性人格を持つことを知ると、ネットに跳梁跋扈する大人たちは驚くか、呆れて笑うかするらしい。いわく、中二病。いわく、思春期の迷走。
 私としてはむしろ、彼らの純粋さの方に驚かされる。昨今の中高生であれば、誰でもこのぐらいはする。しなければ生きてはいけない。
 大事なのは、なにを・誰に対して・演じるかで、それを間違えると悲惨な結末が待っている。それが人づきあいだ。
 人づきあいのテクニックとは、つまるところ、自分の人生が、自分を嫌う他人によって攻撃されるのを回避するための日常の作法だ。ゆえに、TPOに合わせて人格や思想や言動を変える必要がある。
 私の場合には、バカを演じることが多い。
 人間は、自分よりあきらかに劣っているものに対しては警戒心がゆるむ。
 織田信長がウツケを演じたのと同じように、相手にとっての劣等人種を演じてみせるのが、敵意から目を反らすのには多いに役に立つのだ。焼き討ちで皆殺しにするのは、油断させきった後の方が楽でいい。 
 おどけてみせる。天然を装ってみせる。なにもないところで転んだり、ちょっとした失敗をしてみたり。
 たしかに、色々あるけれど、私、みんなこと基本的には好きだよ。信じてる。
 好きな人たちに囲まれて、いつでも笑ってられたらいいなぁ。
 難しいのは、加減だ。
 あまりバカでいすぎても、今度はイジメのターゲットにされてしまう。クラスで三番目ぐらいの純粋さとバカがちょうどいい。
 女は愛嬌。だが、それは女に対しての愛嬌でなければならない。
 男にとっての女の愛嬌とは、つまりは『おまんこなめたくなる』という事だ。ネットでは、そう言われている。この『おまんこなめたくなる』の正しい使い方はただ一つで、
「おまんこなめたくなる女がいない」。
 アニメのヒロインが可愛くない様態を表す言葉だ。その作品のブルーレイディスクが売れない理由、そのアニメの人気がない理由の、最大のものとして挙げられる。
 そして、それは『おまんこなめたくなる』が、男が女に求めているものであること、『おまんこなめたくなる』ではない女に男が価値を認めていないことを示している。
 つまり、私たち女は、男がマジックテープ式の財布から一万円札を取り出して『おまんこなめさせろ』と言われれば、屈託のない笑顔で裏路地でもホテルでも『ホイホイついて』いって『おちんちん』やら『おチンポ』やらをくわえてあげるぐらいの『おまんこなめたさ』でなくてはならないのだ。それが男に対しての愛嬌というものだ。
 だから、男に愛嬌を振りまく女は、女からは嫌われ憎まれる。
 そのいい例が、斎藤愛だった。
 二次コンモードの私との、どうでもいいような会話のあと、ミハルは自分の席へと戻った。とくになにか用があった訳ではないらしい。おそらくはミハルも、あの遺影もどきに気味の悪さと不安とを感じた一人なのだ。それを紛らわすために、たわいのないいつもの日常会話を、私としようと試みた。そう推測できる。
 私はモードを切り替える。
 斎藤愛は、三日前に死んだ。死んで当然の女だった。

///////////////////////////////////

 彼女の背骨のくぼみが揺らめく上半身の動きに合わせて重々しくくねるのを、じっと眺めていた。光の少ない夜の中、それは火山の噴煙にも似て見えた。
 人の裸の背中は面白い。持ち主と離れて、それ自体がまったく別の生き物のようだ。
 彼女の黒く長い髪は、頭の上の方で丸くまとめられている。その艶やかな表面に、月明かりが天使の輪をおろす。
 彼女はなにも着ていない。上も下も、なにもない。
 ただもう、本当に素肌のままだ。
 下着は乱暴に床に散らかされて、下腹部につける薄い布は、もう一枚、同じ場所につける別のものと絡まりあっている。
 制服だけは、きちんとたたんで置かれている。そこがいかにも女の子だ。
 彼女の皮膚。彼女の筋肉。彼女のあそこの毛。彼女の乳房。彼女の乳首。彼女の唇。
 ああ……こうして見ていられることは、どれだけの幸せだろう。
 自分の股間に指を伸ばす。すっかり熱くなっているそこで、指を動かす。はじめはゆっくりと、次第にはげしく。気だるく甘い波が生まれて、その部分から頭まで肉を押し広げて行く。
 そう、これだ。
 こんな幸せな気持ち、今までまったく知らなかった。
 彼女が、こちらへと目を向けた。
 笑っていた。斎藤愛は笑顔だ。
 その笑顔のせいで、幸せが加速する。指が、動きを止めようとしない。

/////////////////////////////////// 

 気に入らない人間には死んで欲しい。誰でも本当はそう思っている。その証拠に、友達同士・内輪のグループの会話では、その場にいない人について、笑いながらこう言っているはずだ。
「あいつ殺せ、もう殺せ!」
 !
 戯れ言? そうではない。みんな、本当は本気なのだ。殺したいほど憎いが、実際に殺してしまったら、自分が捕まってしまう可能性が高い。リスクを取りたくない。つまり、大事なのは一歩を踏み出す勇気だ。リスクを恐れるな。

///////////////////////////////////

 授業がはじまる。一時間目は地学で、先生がナメられているので教室は騒がしい。
 斎藤愛の遺影は担任の女性教師が持っていった。なにも言わなかったが、泣きそうになるのをこらえているのは見て取れた。なんでこんなくだらないクラスの担任になっちゃったんだろう。そんな顔だった。
 私の真後ろの席で富田林がブツブツとつぶやく声が聞こえてくる。
「ここでトラックが突っ込んできて死んだら神。ブルーオーシャンが全滅したら神」
 呪詛の言葉を唱えているかのようだが、いつもの事だ。スマホでアニメを見ているのだ。ニコニコ動画のアニメチャンネルだろう。呪詛の内容からすると青春ものか、女向け寄りの恋愛もののはずだ。正確には、キャラクターは男オタク受けを狙った萌えな感じで、シナリオは女性の書いた感じの生々しさのある、恋愛ものだ。
「死んだら神」
「全滅したら神」
 とは、富田林のような見た目に明らかなキモオタが、自分の男らしさを誇示する時か、自分の頭の良さを誇示したい時に使う時の定型句だ。
 前者の場合は
 ・とても残虐なことを考えつく自分は、お前らよりも男らしく、強い。
 後者の場合は
 ・この内容を理解できないのは自分の頭が悪いせいではなく、頭の悪いシナリオのせい。
 という論理が形作られている。
 富田林の呪詛は、そのままコメント機能で文字化され、アニメ番組の上に気の狂った戯言がまき散らされる。
 そのこと自体を批判はしない。
 人間、誰でも自分に理解出来ないものは死んで欲しいし、気に入らない連中には滅んで欲しい。私だってそうだ。気に食わない人間は殺す。批判なんて非生産的なことをするよりも殺した方が早い。
「うひぃ。マン潮のかおりのするシナリオ。くせぇくせぇ」 
 富田林は、このクラスの誰からも嫌われている。オタクであることも嫌われる理由のひとつだが、それだけなら、同じオタクであるミハルからは同情の眼差しが向けられてもいいはずだ。だが、現実にはミハルは富田林をひどく嫌っている。こんな奴が息をしているからオタク全般がキモいイメージのままなのだと憤慨すらする。あるいは富田林を蔑むことで、自分への免罪符としているつもりのかもしれない。自分もオタクだが、あそこまではひどくない、と。
「ザマァ。wwwwww。ザマァwwwwwwwwww。このアニメは本当におまんこなめたくなる女いないですね。自分勝手なメンヘラ女。統失女ザマァwwww」
 私は富田林の事が、ずっと気にかかっている。
 なにしろ、彼こそが、私の運命の人なのかもしれないのだ。
 あまりに意外性がなさすぎて肩すかしではある。だが、マークする必要はある。誰が運命の人なのか、運命の人へと繋がる糸口なのか、分からない。だから、悲願の成就まで地道にやっていくしかない。
 斎藤愛は三日前に死んだ。そう書いたが、正確には三日前に死んだと思われている、だ。死体が公式に発見されたのが三日前なのだ。彼女のどうしようもない人間性に似つかわしい、どうしようもない死に方だった。死に場所もまたひどかった。昭和の頃には歓楽街と町工場とでできていたらしい、朽ちていく廃墟ばかりが連なった裏路地で死んでいた。あるいはそれは、彼女のボロボロな虚構性にふさわしいとも言える。彼女の膣内からは多量の精液が検出されたが、これは死体となった後で、近隣のホームレスに輪姦されたためだという。ネットのまとめサイトには、そう書いてあった。『だから』生活保護など打ち切るべきだとまとめサイトの住人は論じていたが、どういう論理なのかは私にはまったく分からない。狂人は存在する。インターネットの中には、とりわけ、多く。
 狂人たちは、自分たちの信奉しているインターネットの情報力と、被害妄想に秀でた素晴らしい頭脳をフル稼働させて、彼女を殺したのもホームレスの仕業だろうと推測していた。
 事実は違う。
 殺したのはホームレスではない。ホームレスは、彼女の上にかぶせられていた段ボールの箱を、新しい寝床のために取りに来ただけだ。その中ですでに死体になっていた斎藤愛を犯しはしたようだが。
 斎藤愛は、動かなくなるまでの暴行を受けた後、その全身を隠すために縦長に貼り合わせた段ボール箱を上にかぶせられた。
 斎藤愛を犯したホームレスは、死体の彼女を犯した後で、段ボールをまた上にかぶせた。フタをしておけば腐らないとでも思ったのだろうか。それとも死体の上にかぶせられていた段ボールなど、気味が悪くて住居には使えないと思ったのか。
 とにかく彼女は死んだ。
 幸せとはなんだろう?
 ネットによれば、女がオナニーをする時はレイプされる自分を想像することが多いと言う。実際、私もその妄想を良く使う。オナニーをしている時はとても幸せだ。同じくネットによると、過去、男性社会の日本で女に性欲がないものと思われていたのを問題視したのはフェミニズムの論客らしい。
 実際にレイプされたらどうだろう? 女は膣内に射精されると『子種、子宮に注がれて受精しちゃぅぅ』。
 !
 妊娠の危険がないのなら、レイプされるのもいいと私は思う。だが実際には妊娠の危険があるので、レイプオナニーで幸せになるのだ。逆に自分が『腹ボテ』になる危険が肉体的にはないために、男たちは女をレイプすることに文字通り精を出すのではないのか。
 斎藤愛は幸せだったろうか。女はレイプオナニーが好きだ。妊娠しないオナニーは幸せだ。死んだ後なのだから、妊娠の危険はない。だとしたら三段論法的に考えれば、幸せであったとしても問題はない。
「アスペ、アスペ。プゲラ。このアスペ女が考えてるのは自分のことだけってこと。フヒ。一体なにと戦ってるんですか。なにこのアスペ女。自分勝手なアスペ女は不快です。アスペって不快なので。アスペ」
 富田林はつぶやき続ける。本当に楽しそうだ。きっとツイッターでもこんな調子だろう。ツィートの多い奴というのは、大概、精神的にイっている。逆もまた然りだ。富田林がツイッターをやっているかどうかは知らないが、やっているに決まっている。どうせアイコンはアニメかエロゲの美少女の顔アップだ。
 富田林はそのまましばらく楽しそうに自分語りにも似た呪詛を続けていたが、突然、激しく椅子の引き下げられる音がしたかと思うと、彼の叫びが高い位置から轟いた。
「このアスペがーーーーーーーーーーッ!」
 ここは本来なら、クラスが一瞬水を打ったように静まり返って、その後、爆笑の渦に包まれる場面だ。そして富田林は先生に「なに寝ぼけてんだー」とかなんとか言われて、恥ずかしげに着席する。そんな場面だ。
 現実は違った。
 誰もが富田林の雄叫びを完全に無視した。いつもの事だった。孤独な富田林は、孤独ゆえにおかしくな行動を繰り返して、それゆえに無視され、更に孤独になる。みんなはそれぞれのおしゃべりを平常通りに続けているし、先生は黒板相手に自分の世界に入っている。私も後ろを振り返らない。真面目にノートを取っているフリをする。富田林の頭が更におかしくなって、手当たり次第に暴行を加えるほど気が狂ったら、真ん前にいる私は真っ先に攻撃対象になることぐらいは分かっている。だが、今までの所は大丈夫だし、それに……
 こんな変態キモオタ野郎に攻撃されて死ぬのも、悪くはない結末かもしれない。
 私にはお似合いの最後だ。
 富田林は自分の机をバンバンと叩きながら、怒り心頭に達している。声の位置からすると立ち上がっているらしい。
「こんなアニメ、誰得って話なんですよ。公共の電波を使うんだから、アニメはみんなのものなんですよ! えッ? 俺が証拠なのッ! 誰も得しないっていうね。あーあ、こんなのBD爆死ですよ。制作会社のキチガイオナニーに製作委員会も大迷惑してんじゃないかなァ? アニメ産業はこうして終って行くんだよ。あッ! あーあ、あーあ。不快、不快ッ! こんなアスペじゃブヒれねぇんだよッ! ええッ? 不快つってんだろッ! やめてください! アスペなんて生かしといても日本のためになんねーんだよ!」
 騒がしいままの教室に、富田林が興奮して机を叩く音が、いつまでも続いた。
 チャイムが鳴るまで、いつまでも。

///////////////////////////////////

「生きてて日本のためになんないのは、富田林だよね」
 ミハルが言うと、教室の隅で集まっていた私たちのグループのみんなが、疲労度の高い乾いた笑い声を口にした。
 昼休みだった。富田林はクラスにいない。トイレでお弁当でも食べているのだろう。
「ていうか、なんであんな奴、普通のクラスに入れてんの? 特殊学級とかに入れるべきでしょ」
 呆れたようにそう言ったのは、学級委員の神崎ちひろだ。
「進学校に特殊学級あったら困るって」
 阿藤礼華が、ぺしっ、と、平手の背で、ちひろにツッコミを入れた。
「あいつ、そのうち声優イベントでナイフとか振り回してそうだよね」
 明るく可愛い声で亜紀が言うと、みんなが笑った。
「ありえる」とミハル。
「ウケる」と礼華。
 亜紀が笑顔のまま、小さなため息を吐き出したのを、私は見逃さなかった。
 亜紀はおそらく、場の空気にあわせたのだ。誰もが「あいつキモい」「あいつ怖い」「あいつ嫌い」と言っている中で、「そんなことないよ」と一人で擁護するバカはいない。そういう事をする奴は、協調性がない人間として疎外され、結果、孤独が鬱屈を呼び更に孤独になり、結果、富田林と同じレベルの人間に落ちぶれる。
 学校の中という狭い世界の話ではない。これから一生、永遠にずっとそうなのだ。私たちは、自分たちと『同じ』ことを求める人たちに属するために、空気を読み自分を『同じ』に合わせて同情を請い、それで金と安全とを恵んでもらって死ぬまでの生活を成り立たせていくしかない。私たちは奴隷だ。奴隷でしかない。人間関係は大事だ。
「サチ、よく平気だよね。あんなキチガイの前で」
 礼華が言った。
「あたし、心配でチラ見してたんだけど、フツーに勉強してるんだもん。度胸あるよ」
 ちひろが笑って言う。
 私は記号的な不等号の目をして、テンションやや高めのおびえた声を出した。
「ぜんぜん平気じゃないよ〜」
 礼華が、きょとんとした目で言う。
「あ、そうなの?」
 ミハルがわたしの頭の上に手を乗せる。その手で私の髪の毛をくしゃくしゃとかき回して、小さな子供をあやすように言った。
「怖くて動けなかったんだよねー」
 ミハルは私がいることで、このグループに入れている。私を小動物的な扱いをする『飼い主』的ポジションこそが、ミハルの演劇性人格だと言える。私もまたそのおかげで同質性を付与されていると言えるので、互恵的な関係と言えよう。
「あぅぅ……」
 亜紀が、じっと私を見ていた。
 私のことを、自分と同類だと思っているのだろう。その通りだ。私は亜紀と同類だ。そうなるように常日頃、努力をしている。亜紀とだけではなく、その場の絶対的多数と「同じ」になるように。
 人間はそうやってしか生きてはいけない。
 失敗すれば、富田林正一となり、斎藤愛のようになる。
「あいつ、中学校の頃、イジメられててさ」
 突然、男の声がして、声の方へ目を向けると、村野がいた。
「イジメられっこの奴隷根性のまんま、高校来ちゃったんだよね。で、見た目明らかにキモオタだろ? 趣味もキモオタだし、言動もキモオタ。そんでみんなキモがって、どんどん悪くなってって……」
 村野晋。うちのクラスの男子だ。
「ふーん」
 礼華が適当な感じで処理する。他のみんなも無言だった。もちろん、私もだ。今まで大した接触もない男子が、いきなりやってきてシリアスな話をドロップしても、普通は「それで?」という感じにしかならない。
 自分が外したのを感じたのか、村野はお笑い芸人のマネをして、大げさに手を振りながら、ウチワのようなポーズでおどけてみせた。
「あっ、あっ! 別に富田林擁護派とか、そんなんじゃーねーからッ!」
 私たちのグループの全員の口元に、冷笑がはりついた。すぐにテレビのマネをする奴は最悪だ。最悪の下に最低がつく最底辺として2ちゃん用語やネットスラングを使いまくる奴もいることはいるが、一度それやってる姿を動画に撮って自分で見てみろよ、という点では変わりがない。
「なにしに来たの?」
 ミハルが訊いた。とりたてて冷たいというほどの態度でもなかったのだが、村野は自分が完全に外したことに気がついたらしい。気づくだけ頭がいい。富田林とは違うのだ。村野は姿勢をただして、私の方を見て言った。
「ちょい真島に用あって」

///////////////////////////////////

 私自身は、村野に興味はない。
 レイプオナニーの妄想相手にも使えない男だ。教室というのは、そういう男で溢れかえっていて、村野というのはそういう十把一絡げのつまらない一つでしかなかった。
 村野の後ろを歩きながら、考えた。まあ、犯されるのならそれでもいい。
 幸せとはなんだろう。斎藤愛は幸せだったのだろうか。
 また同じ疑問が、頭の中にフィードバックする。斎藤愛は幸せだったか。本人に訊いてみなければ分からないが、死んでるので無理だ。誰であろうと死んだら終わり。
 村野は私を体育館に連れて来た。
 授業はもう始まろうとしている。そのため、人がいなかった。
「次、ここ使うクラスないから」
 村野はそう言った。なるほど。誰も来ないから存分にセックスが出来るというわけだ。私は村野の股間を見た。勃起していれば不自然な棒状のふくらみがあるだろうと考えたからだが、そうなってはいなかった。不思議に思って首を傾げた。
「鍵、どうしたって? 職員室に忍び込んで、ちょっと、ね」
 村野は見当違いの事を言った。私が疑問に思ったのは、そんな瑣末な事ではない。ちょろまかそうが脅して取ろうが、別にどうでもいい。なぜなら、やったのは私ではなく、村野だから。
 しばらく村野は私の顔をじっと見ていた。その目つきは鋭かった。
「あの……で?」
 私はなにも分からないという柔らかな笑顔で、促してみた。ミハルから小動物扱いをされることからも分かるように、客観的判断からして私は童顔だ。こういう時には、かなり得だ。
「率直に言うけど」
 そう言いおいてから、村野はタメを作った。カッコつけてもったいぶっているのではなく、言い惑っている感じだった。私は「なんにも分かりませーん♪」という笑顔をキープして、彼の次の言葉を待つ。村野は言った。
「斎藤殺したの、お前じゃないのか?」
 村野の顔は真剣そのものだった。
 そういう話をするのに、体育館はふさわしい場所とは言えなかった。村野の強い声が辺りに響いて、外に誰かがいれば聞こえかねなかった。あるいはそれが村野の狙いなのかもしれないが。
 それはまぁ、どうでもいい。私にとっては。誰かが聞いていてヤバくなるか、誰も聞く者なく何も起こらないか、ギャンブルだ。私は動揺していたが、理由はそれとは別のものだ。
「……なんで……?」
 私の動揺の理由は、自分自身だった。人殺しの嫌疑をかけられた事に、自分がショックを受けていることだった。
 この程度のことは覚悟していたはずだ。殺人鬼と下卑た言葉で罵られ、誹られ、逮捕されるなり、リンチされるなりして、いずれは殺されることも。何度も覚悟を書き直してきたはずだ。それなのに。こんな事ではいけない。幾らなんでも度胸が足りなさすぎる。分かっている。これは経験不足が原因だ。もっと経験を積まなければ。処女が膜を破られて、何度も何度も体の奥をつつかれることでセックスの快楽を覚えていくように、この体と脳とに経験を詰め込んで行かなければ。
 村野は言った。
「俺、知ってるんだよね……斎藤とお前、実は結構、仲良かったって」
 興味を引かれる言葉だった。
 一体、誰から聞いた?
 気づかれないよう秘密にしていた事なのに。
 焦りはない。
 恐怖もない。
 今更、暴いても遅いのだ。
 そう、もう遅い。
 斎藤愛は死に、私は覚悟を決めた。
 村野は続ける。
「斎藤って、ああいうビッチだろ? 金払えば誰でもやらせてくれるから、ほとんどの男どもにはウケいいけどさ。そういうの嫌う男もいるんだよ」
 ビッチを嫌う男もいる、そんな事は知っている。だが間違っている事がある。
 金など払わなくても、斎藤愛は股を開いた。
 それに誰でもではなかった。金がもらえる訳でもないのに、好きでもない相手に女は股を開いたりはしない。
 つまり、村野は斎藤愛とはやっていない。
「あの……。ちょっ良くわかんないんだけど……それでどうしてあのっ、私が斎藤さんをころ……したって……?」
 私は怯えたフリをして訊いてみる。この手合いは下手に出てさえいれば、自分から勝手にボロボロと情報をこぼしてくれる。
「女は嫉妬深いからな。つまり、痴情のもつれって奴なんだよ!」
 バカかこいつ。
 私はガッカリした。
 良くいる女性嫌悪……ミソジニー予備軍か。おそらくは童貞だろう。斎藤愛に筋違いの純愛感情を抱いていた口だ。大体、こんな感じだ。いつも遠くから見ているだけだけど、いざと言う時に君を守るナイトになれれば、俺はそれでいい……。アニメの見過ぎだ。
 守れてないだろ、ボケ。
 なにか期待した私がバカだった。こいつに利用価値はない。大した情報も持ってはいないだろう。余計な手間と罪とを省けるかもしれないと思ったのだが、どうやら計画通りに事を進めるしかないようだ。
 とりあえず適当にいなしてこの場を去ろう。それとも今……と考えてスカートのポケットに手を入れる。……それとも、今、こいつから。
 それも悪くないと決めかけた時、大きな音を体育館中に響かせて扉が開いた。
「どうして? どうしてそんな事言うの? 言いがかりもいいとこじゃん!」
 亜紀だった。









 体育館が勢い良く燃え上がると、かなりの騒ぎになった。
 全焼はまぬがれないだろうとは思うが、途中で火が消えても、それはそれでいい。
 彼女の死体が丸焦げの消し炭になるか、生焼けのホルモンになるかの違いで、正直な所、どうでも構わない。
「キレイだね」
 私がそう言うと、隣の富田林が感極まって歌を歌いはじめた。
「燃ーえろよ燃えろよー」 
 バカな男だな、と私は思う。こいつは本当にバカな男だ。
 男がバカなのか、富田林がバカなのか。
 ひとつ、分かった事がある。
 ほんのちょっと利口になって『おまんこなめたくなる』女になって、スッキリさせてあげさえすれば、男というものは言うことを聞くのだ。
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