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あさじむおう

Author:あさじむおう
文章荒れまくってるブログですが
いつもボロボロになった1日の終わりに
書いてるので許してください。

さまざまな活動報告や、映画、音楽の感想を中心に。

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01、02
 あとで消す時に大変だからジャンル分けして項目を分離。
 なんで消すかというと、消しとけば載せた奴でも送っていいらしいから。
 なんで載せるかというと、載せないと書かないから。

 01

 少年は笑顔で別れを告げた。
「それじゃあ、ここで」
 異国から日本へ。日本から異国へ。数多の旅人がひっきりなしに行き交うエアポート、羽田。
 少年の前には小さな女の子がいる。肩の高さで小さな手を振り、少年の別れの言葉に応えている。背は少年の半分ぐらい、髪の毛は肩より少し上で切りそろえられている。
 この女の子は、まだ十になっていない。
「じゃあね。元気で」
 女の子は名前を藍と言う。少年の妹で、小学三年生だ。もうすぐ四月だが、四月になっても三年生だ。
 妹の言葉に、少年は笑顔のまま、ただうなずいた。
 振ってはいない方の妹の手は、男の手に繋がれている。芋虫のように丸々とした指の、中年男の手に。
「本当に行くのか?」
 少年にそう訊く芋虫指の中年男の風貌は、サングラスをカチューシャ代わりにしたロンゲに太鼓腹と、まるで人さらいのようだが、これは少年とその妹の父親だ。これでも昔はハンサムだったのだ。過去に鍛え上げた筋肉のヨロイが、日々の生活に呑まれて贅肉へと変わってしまっただけで、元はいい。よくよく見ると目元や口元が子供たちと似ている。
 少年は父に答えた。
「うん。行くよ」
 その目には強い意志の力が宿っていた。
「そっかァ……。寂しくなるなぁ……」
「パパ、往生際が悪いわよ」
 そう言ったのは、芋虫指のグラサン太鼓腹ロンゲ中年男の妻、つまりは少年と妹の母親。こちらの方は昔も今も美人である。美男美女の間から生まれたので、子供たちはどちらも中々の美形だ。
「でも、ママァ……」
 父はグズる。
 自分ももう十五なんだから、『パパ・ママ』はないだろう。常日頃、少年はそう思っていた。だが、抗議をした事は一度もない。なぜならこの少年は、良い子なのだ。どうして良い子なのかと言えば、両親が良い人だからだ。人間、育ちの環境は大切である。育児環境と発達障害についてその科学的な根拠を書いても良いのだが、長くなるので日経サイエンス2〇13年8月号の「チャウシェスクの子どもたち」という記事に目を通していただければと思う。
 とにかく少年と妹は、質の良い両親から質の良い愛情を注がれて育った。愛情というのも結構むずかしいもので、周りの見えない溺愛が子供を苦しめ精神を歪ませることも多い。筆者の頭の中の宝石箱から、禍々しくきらめく思い出を引っ張り出してきて、二、三、並べてみても良いのだが、精神がまた不安定になるし、「罪と罰」を書いているのでもないのでやめておこうと思う。
 どこからかクレイジーケンバンドの『メリメリ』が流れてきている。
 なんだか映画のラストシーンみたいな空気だ。
「体に気ぃつけなよ、ね」
 母が言う。
「うん。みんなも、ね」
 少年が家族に言う。
「それじゃあ、また」
 母は明るい笑顔で手を振り、その手で娘の肩をポンとたたきつつ少年に背を向け歩き出す。
「じゃね、お兄ちゃん!」
 妹も笑顔で去って行く。
「ああ、また!」
 少年も笑顔で応える。
「じゃあな。いつでも来ていいんだからな」
 つながった娘の手に引っ張られ、父も未練たらたら歩き出す。
 そして少年はひとりになる。
 しばらく笑顔で手を振り続け、そして、自分の道を歩き始める。
 羽田空港。窓の外に飛びたつジェットの迫力ある姿が見える。
 少年の足取りは軽くなる。
 早足は浮かれたスキップになり、遂には飛び上がって喜んだ。 
「いやっほぉぉぉぉぉぉぉぅ♪ これで自由っだーーーーーー!」
 少年の名前は岡野翔。十五歳。
 繰り返しになるが、彼は良い子だ。家庭環境も良い。『良い子』ほど内実は歪んでいるというイメージが世間の一部にはあるが、そう言うのもない。少年は自分の家族が好きだし、家族も少年が好きだ。そりゃあ、一緒に暮らしている中でお互いに気に入らないことや制限は幾つもあったけれども、逃げ出したくなるほどの不満はない。
 ただひとつを除いては。
 もうすぐ四月。
 妹は小学四年生になれず三年生のままだが、少年は高校一年生になる。
 少年もまた、あやうく高校生になれなくなる所であった。  

● 02

「こんなチャンス、一生に何度もあることじゃないんだぞ」
 剛志……翔の父は、前に息子にそう言った。確かにその通りだと翔も思って、だから、だいぶ迷った。
 迷った気持ちのままで受験会場へ向かい、手を抜いて落ちたら『こんなチャンス』に手を出そうなどとまで考えたりもしたのだが、受かってしまった。手を抜いても合格できるほど頭が良かったのではない。なんせ根が正直なので手が抜けなかったのだ。
 それでも、もしかしたら心の迷いの影響とかなんとかで落ちているのではないかとも思いはして、合格発表の貼り出しの前で複雑な心持ちになっていたら、同じ高校を受けた現役中学生声優(当時)の野々宮綾花に
「なに? せっかく受かったのに、その顔って」
 と笑われたりもした。
 受かってしまったので、翔は自分自身で、ふたつの選択肢から人生を選ぶことになった。
 日本で普通の高校生活か、一年間の世界旅行か。
 世界旅行と言っても実質ロハである。金を出すのは自分ではないのである。よって筆者ならまず一〇〇%間違いなく後者を選ぶ。だが、翔はまだ十五歳の少年だった。
 普通の高校生になる道を選んだ。
 いくらまだ十五歳だらって、世界旅行に一年間なんて、一生に何度もどころか一度だって巡ってこないかもしれないチャンスだということぐらいは、分かっている。
 それでも棒にふったのは、普通の高校生になって普通の青春を送りたかったから……ではなくて、かねてからの不満が未知への探究心に少しだけ、ほんの少しだけ、勝ってしまったからだ。
 『こんなことには、もうウンザリだ』
 『世界』と頭についたって、結局は、これまでの延長じゃないか。旅をして、服を脱ぎ、湯につかる。笑みを浮かべ、舌鼓をうち、コメントする。なにも、なにも変わらない。
 幼いころから、翔はそうやって日本全国を回ってきた。家族とそしてテレビスタッフと一緒に。出席日数や友達づきあいを犠牲にして。
 この選択は正しかったと自分に言い聞かせたくて、窓の外へと目を向ける。
 電車は、今、湘南台へと向かっている。
 土地なりに畦の作られた畑の中に、ぼつりぼつりと住宅や雑木林の落ちる、のどかな午後の風景が車窓に流れて行く。
 親愛なる読者諸君。
 文句を言われないよう、一応、書いておこうと思う。
 少年は飛行機には乗らなかった。飛行機に乗ったのは少年の家族の方である。少年は羽田から京急で横浜まで行き、横浜から乗り換えで相鉄線というローカルな私鉄に乗り換えた。これから一年間居候するお宅のある六会日大前という駅が目的地である。これは筆者のカンだが、たぶん、別の乗り換え方の方が早い。六会日大前は湘南台の隣なので、それだけが頭にあったのだろう。素直で良い子だけに、少し、不器用なところがある。
 横浜で買った崎陽軒のシウマイのことを思い出し、バッグから取り出し膝の上に置いた。ペットボトルのお茶も出して窓の桟の上に置いた。
 翔の座っているのはボックス席で、他に人はいなかった。車内はそこそこ空いている。
 このシウマイは、おやつだ。横浜駅の改札前に売店があったので、つい買ってしまった。横浜名物と言ったら、なにはともあれ崎陽軒のシウマイなのだ。見つけたからには買わねばなるまい。昼食は家族と羽田でとっていたのでお腹がペコちゃんというわけでもないが、六個入りの小さな箱だから、入るだろう。
「いただきます、と」
 ひざの上のシウマイの赤い箱に向けて手を合わせ、小声で言う。
 包装をはがそうとしたのだが、セロテープが上手くはがれない。ビリビリ破いてしまえばいいのだが、なにかつい意地になってしまって、どうしても奇麗にはがしたくなってしまった。だが敵も強者。中々の粘着力だ。それで様々な格好で包装紙と格闘していると……
 ひとりの少女が飛び込んで来た。
 
  (つづく)
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ルナティック | 11:32:28 | トラックバック(0) | コメント(0)
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